ディズニーの復活ストーリーについて話しましょう。
まず、ディズニーは数ある作品の中でも1980年代の終わりくらいから1990年代の初めに多くのヒット作が誕生しています。
『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』はご存知の方も多いでしょう。
当時、敏腕プロプロデューサーの元、フラットなチームで意見を出し合い生み出された作品です。
しかし、そのプロデューサーがディズニーを辞めてからは『ラマになった王様』『アトランティス 失われた帝国』など、そこまで世界中に行き届く作品は望めませんでした。
また、日本でこそ人気の『リロ・アンド・スティッチ』も世界的にはそこまでヒットはしませんでした。
一方、ディズニーが出版に携わっていた『トイ・ストーリー』『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』をはじめ、ピクサーから次々と人気作品が生まれ、今でも根強いファンがいるほど多くの人を楽しませています。
そして2000年頃、ディズニーよりも売れていたピクサーはディズニーからの独立を考えましたが、ディズニーはピクサーを買収することで引き留めたのです。
ここからがディズニーの逆転劇とも言え、とても興味深いところです。
『塔の上のラプンツェル』『アナと雪の女王』と 続けて大ヒット作を生み出せた秘訣はどこにあるのでしょう。
「Creativity, Inc.」by Ed Catmull(クリエイティビティ・インク)という本があります。
日本では「ピクサー流 創造するちから」が出版されています。
私たちの知るピクサーの “裏側のストーリー” が書かれていて、とても面白いのでピクサーが好きな方にはぜひ読んでほしいです!
これはピクサーのマネジメントに関する本なので、マネジメントが好きな方にもぜひおすすめします。
この本に書かれていた話ですが、当時のディズニーはトップダウンの会社だったそうです。
つまりマネージャーが偉く、昔から在籍している社員がチーム内で強い立場にあったのです。
意見がぶつかった時にも、リトル・マーメイド や ライオン・キング などの大ヒット作に関わっていた人だから という理由で意見が優先されていたと言います。
さらに社員同士の競争もあり、皆の前でアイディアを発表したら盗まれるのではないかという思いが巡り自分の手柄にするためにアイディアを秘め、他人のアイディアに対してケチをつけ批判したりと、決して良い関係性ではなかったとのことです。
みんなで良い作品を作ろうという思いより、ピラミッド型の組織の中の自分の立ち位置ばかりを考え行動するような環境になっていました。
それに対しピクサーはボトムアップという平等主義の組織体制で、良い作品を作る上で偉い立場という概念は必要ないという考えをもっていました。
メンバー全員に発言権があり、意見の価値も立場や経験値は一切関係なく、作品のために意見を述べ、みんなでベストなアイディアを選択していこうという環境を作ったのです。
面白くないものを作らないために、作品を良くするためにメンバー1人1人の率直な感想や意見を求めることを重視したそうです。
では、そこからディズニーの文化をどのように変えたのでしょうか。
このピクサーの方法を取り入れたいところですが、そのまま持ち込んでも反発が生じてうまくいかないと考え、ピクサーの会議にディズニーのメンバーを同席させ、静観させたのです。
意見ができるメンバーとしての参加はさせず、会議の段取りや流れを見て雰囲気を感じ、ピクサーの作品がどのように作られているかを観察し、考えさせるようにしました。
会社に戻ったディズニーのメンバーたちは、自分たちのやり方でピクサーのスタイルを取り入れていこうと話し合い、社内コミュニケーションを見直したのです。
意見の平等や、作品のために互いのアイディアを尊重し意見を交わし、その積み重ねで『塔の上のラプンツェル』『アナと雪の女王』という大ヒット作が誕生しました。
このディズニーの復活ストーリーを通し、マネジメントのやり方によって会社の文化を変えることで成果物に影響を与え、大きな成功という結果を出せると言えます。
権力に従い間違っている方向に進むのか、ピクサーのように皆で話し合った結果をマネージャーが最終判断をし成功へ踏み出すのか、ベストな方法を考えてみましょう。
ただ、意見の平等という点を汲んでコンセンサスにこだわるのはおすすめしません。
決まるまでに時間がかかってしまったり、本来の判断ができなくなってしまう可能性もあります。
ディズニーもピクサーもコンセンサスではなく、どこかでリーダーシップが必要になります。
そのリーダーシップが、有無を言わさず権力を駆使されたものなのか、皆で意見を出し合った結果を決定する役割が成すものなのかで大きく変わるのです。
CEO グスタボ・ドリー
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