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執筆者の写真Gustavo Dore

自分の好きなことをやるべきでは?この問いを別の視点から見直すことで、自分の仕事や生活がどう向上しますか。

こちらの記事は、オフィスのミカタに寄稿しているコラムです。

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いつもはここで、皆さんの仕事を向上させるためのヒントについて書いています。どんなスキルを学べば作業をより速く、より良くし、そしてエラーをより少なくできるかについて書いています。今日は、ある根本的なポイントについてお話しすることにします。これは遺伝などによって受け継がれるもの、個性によって生まれるものと考えられているものなのですが、私自身はこの考え方には賛成しかねます。自分はこれもまたスキルだと考えています。自分はこれをもともとは持っておらず、学んで得たからです。

私がお話ししているのは、自分が好きなことをやる、ということについてです。人生の数年間、私はこの問いに興味をかき立てられていました。本も何冊か読みました。どれも本当にお薦めできる本です。他の人々のライフストーリーについて書かれています。人生全般についての全容を見せてくれます。そして、私たちみんなが唯一無二であると同時に、唯一無二ではないのだということに気づかせてくれます。ここではその中の2冊を挙げておきます。私の教授であるボブ・トビン著『10年後、後悔しないための自分の道の選び方』と、ポー・ブロンソン著の『このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか』です。

問いに戻りましょう。自分の好きなことをやるべきではないか?

まず、自分は何が好きなのか? それをどうやってやるのか? 大半の人と同じように、私は芸術が好きです。映画、テレビ、漫画、ゲーム、音楽、エンターテイメント全般が好きなのです。この理屈で言えば、世界の80%の人がエンターテイメント業界で働いていることになります。そして私たちは、世界の人がそのようには動いていないことを知っています。経済学者のアダム・スミスは、人は自分の興味があることをやるべきだと信じていました。世界には多元性が溢れているので、私たちみんなが充実した生活を送ることができる、と。しかし世界はそんなふうにも動いていません。

この問いに対し自分が出した最良の答えは、それを別の視点で大きく見直すことでした。次の数年間に何をやろうと決めれば、自分の目標を達成できるのか?

私は両親を愛しています。両親は持っている限りの知識を使って最善を尽くしてくれました。子供の頃は何不自由ない生活を送っていましたので、文句は言えません。大人になってみて、自分は子供から十代にかけて、この身が野心にさらされたことがなかったことに気づきました。達成にさらされたこともなかったし、気になっていた仕事をして興奮を覚えたこともありませんでした。幸せな人生とは政府や大企業のために働くことだ、と教えられていました。両親はそうした型通りの生き方をしていました。大学に行き、政府の仕事に就きました。父も母も政府関連の仕事をしていました。母は州立の小学校の教師で、父はブラジル政府所有の銀行の窓口係でした。どちらも、低賃金ながら終身雇用の安定した職です。ですが私には、両親が本当はあまりいい経験をしていなかったことがわかっていました。さまざまな不満をこぼしていました。上層部に対する不満。金欠に対する不満。政府の賃金に対する不満。ありとあらゆることに、不満を抱いていました。父は45歳で120キロ近くの体重がありました。母も太りました。両親にとっては、食べることが日々の欲求不満の解消法だったのです。

そして私も同じ道に入りました。大学に行き、大学院の学位を取得し、大企業に入りました。外から見れば、素晴らしい人生であるかのように見えました。ソニーでの最初の2年間は素晴らしいものでしたが、その後はほとんど惨めなものでした。概ねイライラしていました。経営陣の古いやり方を変えることができないことに不満を覚えていました。給料が不満でした。昇進のオプションにも不満があり、自分に課せられた制限にも不満を感じていました。両親の場合と違って、私のはものを食べなくなってしまいました。ダイエットもしていないのに、1年間で12キロも痩せました。概して、エネルギーがほとんどなくなり、ただただ悲しく感じていました。自分は両親となったのです。これで生命の輪の出来上がりというわけです。

それと同時に、リクルートで働いてみると、また違った種類の人たちに触れることになりました。自分よりも楽しい人生を送っていた人たち。自分よりもっと元気一杯で出社してきて、もっと多くのお金を稼ぎ、もっと多く笑い、もっと多くの友達を作っていた人たち。この人たちは、会社のビジョンやミッションに対する情熱などほとんど持っていませんでしたが、最高の人生を送っていました。私はこの人たちに感心しました。そしてその行動様式を探し求めるようになりました。日本では誰もが愚痴をこぼしに飲みに行くというのに、この人たちと一緒に飲むと、楽しむ、ワクワクするようなことをする、新しいプロジェクトを始める、そして世界中を旅した話をしたいためだけに飲んでいるのではないかと思わせられるのでした。

彼らから得た最も重要な教訓は、この人たちはみんな自分自身に対して全力を注いでいる、ということでした。彼らには達成したいことがありました。バーを開きたい。年に1度エキゾチックな場所に旅行したい。海岸の近くに理想の家を買いたい。会社勤めは、目標を達成するのに十分なお金を稼ぐための、いくつかの方法の1つにすぎなかったのです。彼らにとって、人生とはゲームのようなものでした。主な目的は持っていましたが、それは彼らの性格や何かに本来備わったものではありませんでした。彼らはそれを選んだのです。ある日椅子に座って、それを一枚の紙やらパソコンに書き留めたのです。次に、それを達成する方法を追跡したのです。どんなスキルを身につければいいか、どのくらいのお金を稼げばいいか、不足分を補足するためにいくつのサイドプロジェクトを取ることができるか、どうすれば、余った少しばかりのお金を何らかの公債に投資できるか。そして、そうしたことをすべてこなしながら、どうやって家族を楽しむ時間を作り出すことができるか、と。

この人たちすべてが同じスキルを持っていたわけではありませんでした。何人かはデザイナーでした。営業担当者もいたし、エンジニアもいたし、会計士もいたし、秘書もいました。会計チームにいた1人は、サイドプロジェクトをやっていました。専業主婦向けの商品をお薦めするWebサイトでした。このチームは数年後大きな成功を収め、チームはそれを売りました。そしてこの人はお金持ちになりました。この人はその翌日やその翌月、何をしたでしょう? リクルートの会計士を続けていました。その仕事が好きだったからです。さてしばらくの間、私の机はこの素晴らしい秘書の方の机と並んでいました。彼女は大変大きな家を持っており、エンジニアとしてお金を稼げるだけ稼いでいました。秘書として大変優秀だということが分かったため、2つの職をこなしていました。勤務時間はそれぞれ半分ずつで、給与はどちらもフルタイムの給料を受け取っていました。それに、彼女が職場にいることを誰もが喜んでいたのです。

目標はお金を稼ぐことではなく、自分の望みを達成することです。それが家であるかもしれないし、自分のチームで認められることかもしれないし、家族とより多くの時間を過ごすことかもしれません。それを達成するための計画を作ることが大切です。いったん計画ができれば、人生はゲームとなります。あとはそのゲームをこなしていけばよいのです。レベルがあり、NPCがあり、達成があり、そして新しいスキル習得の過程があり、次はそのスキルのレベルアップ、というように。

アニメ『波よ聞いてくれ』を見ました。2020年シーズンとして最高の日常系アニメだと自分で思っているアニメです。カレーシェフになるために北海道に引っ越したものの、途中で方向性を見失い、結局スカウトされてラジオパーソナリティになり、自分の天職をそこに見出す女性の話です。信じられないほど現実的で賢いジョークの数々も素晴らしいのですが、南波瑞穂(なんばみずほ)というラジオ会社のアシスタントディレクター(AD)の女性のキャラクターが目につきました。彼女は恥ずかしがり屋で親切で、常に舞台裏からみんなを助けています。エピソード12では、彼女がラジオでADの仕事がしたいと言っている場面があります。ディレクターは「なぜADなのか」と尋ねます。彼女は、自分がスポットライトを浴びるなんて想像できないと答えます。自分には主役よりもアシスタント役の方が向いている気がする、と。ディレクターは彼女に、そんな考え方はこの会社には合わないと言います。この会社は、「私はADから始めますが、やがてはディレクターになり、私の働きによってリスナーの数を2倍にしてみせますので、見ててください!」と言うような人間が欲しいのだ、と。彼女にはそれが理解できたらしく、認められるべくもっと積極的に振る舞うようになり、ディレクターを目指すようになります。

私は、これがまさに日本だと感じました。南波瑞穂は、私の元に来て、事務仕事に応募する日本人のすべてを代表しているのです。こうした人たちは、自分には事務仕事しか能がないと思っているのです。他人の影になるしかない、と。ディレクターが彼女にしたことを、すべてのボスがお手本にすべきです。水準を引き上げ、目標をより高くし、ゲームをよりチャレンジングなものにする。つまり、より楽しくする、ということです。支え役の人は世界中に十分すぎるほどいます。これ以上必要ないのです。私たちに必要なのは、信頼できるパートナーであり、やる気満々で出社してくる人たちなのです。

あなたにはそれができます。全力で頑張って、自分が望むものを達成することができるのです。そうするには、それを自分のものとしなければいけません。自分のスキルがどんなものであれ、それに一生懸命取り組む必要があります。自分を支え役としてではなく、他のチームメンバーと同じレベルの、覇者として考えましょう。現場の最前線に立ち、仕事をより良く、より効果的に行うための新しい手法を披露してみせましょう。もう1つの選択肢は隠れることですが、それではできることが限られてしまいます。相当な欲求不満となります。隠れたポジションを守りたいがために、仕事の数を減らし始めます。学ぶことを止めてしまいます。他の人があなたに優れた仕事をやり遂げてほしいとプレッシャーをかけても、それが次の進歩への足がかりではなく、単なるプレッシャーとなってしまうのです。

今回のお話はここまで。自分が今どんな働き方をしていて何を得ているのか、ふと考えるきっかけにしてください。

【執筆者プロフィール】

ドレ・グスタボ(ドリー) CEO (Chief Executive Officer)

新しい働き方を目指し、HRTECHベンチャーのワークスタイルテック株式会社取締役。元ソニーVAIOの商品企画において、グローバルなボリューム商品からハイクラスな商品までを担当し、リクルート(株)においては様々なインターネットサービスのUI/UXの設計を行う。慶應大学でデザイン思考の修士課程を卒業。VAIO時代からリクルート時代を含めて、イノベーションを目的としたプロジェクトリーダーとしての役割を果たす。

テクノロジーで個々に最適な働き方の選択肢を与える」世界を作りたい。

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