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執筆者の写真Gustavo Dore

地方が力を入れてクラウド時代のバックオフィス人材を育成すべき理由。

税理士としてだけでなくバックオフィスの改革にも積極的に取り組み活躍されている 田中慎さんに執筆いただきました。

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先日経営者の方とお話をしている中で「これからの地域経済にとってバックオフィス人材の育成が必要」ということについて触れたので、今回はそのお話について。

この記事を読んでいる地方のバックオフィスで働く方にとっては、今後どのような考え方やスキルを身に着けていくべきかの参考になれば嬉しいです。

どの地方も起業家育成に力を入れている

東京に限らず、地方でも新たな産業創出や雇用創出を目的として、起業支援に力を入れています。創業塾や創業セミナー、スタートアップ支援や各種ビジネスプランコンテスト。対象も女性起業家向け、シニア起業家向けなど、起業に関するセミナーについてはどの地方でも予算をつけて活発に行われています。

私は横の繋がりからそうした創業支援に関する情報も多く耳にしますし、京都市ソーシャルイノベーション研究所(SILK)というビジネス支援機関のコーディネーターをしているので、行政の創業支援の状況についてはよく知っている方だと思います。

どの地域も似たような起業支援の取り組みをしているのですが、スタートアップエコシステムと言われるような起業家を支援する環境には、投資家、金融機関、士業専門家、大学、行政などが名を連ねているのですが、起業家を中から支え、日々の業務を回す仕組みを作り、その仕組みを生かして正確に業務を遂行するバックオフィス人材の育成支援の観点は、まだまだ不足しているのではないかと感じています。

地域を挙げて、クラウドサービスを活用した業務構築と運用ができるバックオフィス人材の育成に取り組み、そうした人材の関係性が目に見える存在になっていくことで、その地域は右腕となる存在を探す起業家にとってどこよりも起業しやすい環境になるのではないでしょうか。

地方におけるバックオフィス業務に関する問題

バックオフィス人材の育成に関しては、どこの地域もスキルアップセミナーや講座を提供していると思うかもしれません。ところが、私が見ている地方では起業家・専門家・バックオフィス担当者・行政、それぞれ以下のような問題を抱えているように感じています。

そう、バックオフィス業務を取り巻く地方の課題はまさにこんな感じ。

起業家は、当然ながら新しい事業をつくることや売上をつくることが得意です。起業塾やセミナーなどもありますが、その中で学ぶことは事業計画の立て方やビジネスプランの作り方についてがメインです。自分のビジョンを目に見える形にすること。それが起業家の仕事なので、多くの方はバックオフィス業務について関心を持ちません。「クラウドサービスを使えば専門家は不要。基礎知識がなくてもうまくいく」という上辺だけの話を鵜呑みにして、誤った処理を続けている起業家はたくさんいます。

バックオフィス業務の構築を支援する専門家も地方においては頼りになる存在でしょう。しかしながら、会計や税務、労務、法務、それぞれのバックオフィス業務の専門家がITに精通しているかというとそうではありません。もちろんITに疎いからと言ってダメな訳ではなく、素晴らしい専門性を持つ専門家はたくさんいます。ただ、そうした専門家が受け取るアウトプットが「紙しか無理」という事例もまだまだ多いように聞いており、専門家が企業のクラウド化を阻害しているということもあるように感じています。

当のバックオフィス業務担当者にも、周りがどう言おうが「今のやり方を変えたくない」という人もいます。何かともっともらしい理由をつけて今までのやり方を変えることを否定する方も多い。「クラウドだと不安。紙が安心。」そんな声もまだまだ耳にします。本人は悪気があって拒んでいるわけではなく、何を恐れて拒んでいるのか自覚をしていないケースもあります。

行政・地方自治体も前述のとおり、地域に起業家を数多く輩出しようと予算をつけて一生懸命取り組んでいます。ところが、優秀な起業家が地域で育っても、地域に雇用を生み出し続けるとは限りません。今のようにリモートワークが当たり前の時代には、優秀な人材が都市部からリモートでバックオフィス業務を支援する、ということも事例として数多く見受けられます。むしろ、地域のITに弱いバックオフィス人材を雇うよりも、リモートで効率的に業務を回してくれる人材に手伝ってもらいたいという起業家は多いでしょう。

「対岸の火事」は変化のための機会

「東京問題」という言葉を耳にするようになったように、東京とそれ以外の地方ではコロナ禍に対するスタンスがあまりにも違うように感じています。

もちろん全国的にソーシャルディスタンスを保ったり、様々な対策を講じてはいるものの、地方のオフィスワークはほとんど今まで通りの姿に戻っているのではないでしょうか。リモートワークに取り組んでみたものの、多くの企業にとってはあくまで緊急避難的なもの。

前回の記事で「変化する企業」と「元に戻る企業」の差が開いていくというお話をしましたが、その傾向は現在、東京とそれ以外の地方でも顕著に表れているように感じています。

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