前回、日本人と外国人との当たり前が違うという話を例に、日本で働く外国人との間には多くの問題があることをお伝えしました。
では、どのように外国人とうまくコミュニケーションを取ればいいか 6つの考え方
についてお伝えします。
これは結構マニアな話になりますが、いろいろな国の文化の研究をしているホフステードインサイト(Hofstede Insights)という会社があります。
そのホフステードには、研究に基づいた数値による6次元モデルというものがあり、この6つの考え方を理解することで 違う国の相手とコミュニケーションを取れ、仕事がうまくいくようになるでしょう。
国ごとによって全く違うので、今回はブラジルと日本を比較します。
【6つの考え方】
①Power Distance(パワーの使い方 : 権力格差)
これはHierarchy(階層) = 上下関係とフラットな社会の話です。
スコアが高ければ社会としてのHierarchy(階層)が高く、それによりどういうことが生まれるかというと、例えばお金持ちの限られたエリートがいるとして、他に多くの貧乏な状態であってもおかしく思わない「それが人生だ That's life」というイメージです。
ブラジルはこれが結構高いです。
一方、日本は上下関係があるとしても実は意外ともう少しフラットな関係でもあります。
仕事の中で上司を尊敬したりボスとして部下との上下関係もありながら、そこにすごく差がある訳ではありません。
日本のトップクラスのマネジメントと下っ端で、例えば3~4倍ほどの給料の差があるとして、ブラジルは3~4倍どころではなく10何倍~20倍の差になるのでパワーバランスが全然違います。
日本人はこの文化しか経験していないので結構上下関係が強いと思うかもしれませんが、実はブラジルはもっと強くて、仕事上でボスや上司は「神様」とまでは言いませんが、とても偉い人で、言われたことを全てやらなくてはという気持ちになります。
実際、私は日本で会社を経営していますが、“上司の指示だから” という理由だけでは場合によって誰も動かないということもあります。
特に工場など、昔は日本でも人を動かすのはパワーだったかもしれませんが、これからは違うやり方を取り入れなければなりません。
②Individualism VS Collectivism(個人主義 VS 集団主義)
人とグループの関係で、私(個人)か私たち(集団)かという個人性の話です。
例えばこのスコアが高いアメリカ人は「私一人で何でもできる」と思う傾向がありますが、ブラジルと日本はここが似ていて、「ブラジル人とは」「日本人とは」というところを会話の中で大事にしている文化です。
また、日本よりもブラジルの方がグループ性があることが面白いと思いました。
日本はグループをすごく大事にし、個人性はそこまで大事にしないと多くの人が言い、個人が目立つことを叩くというような話をよく見聞きしますが、実はデータを見るとブラジルの方が厳しいことがわかります。
私がブラジル人として日本に来て感じたことを挙げると、例えばブラジル人の男性のファッションはかなり限られていますが、日本はもう少し自由性、柔軟性があって個人的にそれがとても嬉しかったです。
また、私は日本で暮らしていて、ちょっと仲間はずれみたいな感覚があり、最初から「外国人」という枠もあって自由度が高いという感じがしています。
③Masculinity VS Femininity(男性性 VS 女性性)
マスキュリニティ(Masculinity)=男性の考え方、男らしさが大事と考えられ、このスコアが高いと男性の価値観が社会の価値観になっていると言えます。
これは男性は家庭よりも仕事を優先し、女性はもっと家にいて子どもの面倒を見ればいいなどという考え方が多い国です。
ブラジルはマスキュリニティが弱い方で、この点は日本と差があります。
女性の価値観が社会の中で強く、「家族をもっと大事にしよう」「子どもをちゃんと育てましょう」「仕事よりも人生を楽しみましょう」など、そういう女性らしい価値観を持っています。
④Uncertainty Avoidance Index(不確実性の回避)
曖昧さを拒否、回避するという話です。
ほとんどの人が曖昧を嫌いますが、文化によってどのようにうまく管理するかを知ると面白く、文化によっては曖昧さがあってもいいのです。
ブラジル人も少し曖昧さを残しても別になんとも思いません。
しかし日本だとその曖昧さに対してすごく拒否反応が強いです。
これもブラジルと差がある部分で、日本はむしろ細かく説明し、曖昧がないようにコミュニケーションを取って努力しようとします。
しかしこれがなかなか大変で、外国人とのコミュニケーションでぶつかることが多いです。
例えばうちのチームの日本人も、外国人社員とコミュニケーションする中で“やさしい日本語”を使わず、最小限の言葉で日本人と同じコミュニケーションの取り方をすると 結果的に曖昧さが出てしまいます。
“同じ当たり前”ではなく、もともとのベースが違うので、その最小限の言葉では理解できなかったりしてその曖昧さが生まれた時にも外国人は質問をしません。
なぜかと言うと、曖昧であることは問題ではないからです。
追加の質問をしないため曖昧のまま進み、期待していた結果が出ない時に日本人が「なぜ最初に聞かなかったの?なぜこの曖昧な状態で進めたの?」と訊いても、「曖昧な状態であっても進むのは当たり前じゃないか!」と意見の食い違いから衝突することが少なくありません。
⑤Long Term Orientation VS Short Term Normative Orientation(短期志向 VS 長期志向)
決めたことに対し、自分の将来を見据えて長期的にきちんと考えているのか、短期的なことを考えているのかという話です。
日本人は長期的に考えてしっかり貯金ができたり、長いプロジェクトで今すぐ成果が出なくてもいいと頑張り、例えばマネジメントになるのも5年や10年待てば何とかなるでしょうという長期的な考え方です。
私はSonyに勤めていた時にも「え!すぐマネージャーになれないの!?待てない!」と、短期的な考えの方が強かったのですが、長く日本にいて少し心が変わった気がします。
もちろん今も短期的な考えを持っていますが、このような違いもあるということがわかります。
⑥Indulgence VS Restraint(充足的 VS 抑制的)
インダルジェンスのぴったりな言葉が見つからなかったのですが、私が思う一番近い表現は「わがまま」です。
自分の欲しいものや、すぐに行動するところをどれくらいコントロールできる社会かという話です。
ブラジル人はこのスコアが高く、ブラジルと日本を比較した時にブラジル人の方がわがままで「もっと楽しみましょう」という考えを持ち、例えばお金が入ったらすぐに使ってしまうなど、だいぶ前向きな社会でもあります。
逆に日本はこのスコアはだいぶ低く、我慢をする傾向が強いためネガティブな社会と言えます。
ずっと我慢をしているのでストレスも溜まりますが、一方でもちろん良い意味もあり、大変な時にしっかり貯金ができたり我慢ができるというところです。
会社の社員の関係の中でのモチベーションの動きも、そういうところが影響しています。
この6つの考え方を理解し、ぜひ自分と異なる国の人とのコミュニケーションに役立ててください。
違いを知ることで面白い発見があり、きっとあなたの世界、あなたの周りの世界が広がります。
外国人とうまくコミュニケーションを取って、仕事を成功させましょう!
今回、ブラジルと日本の比較をしましたが、また違う文化も紹介したいと思います。
CEO グスタボ・ドリー
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